月の小部屋

俳句のことなど。

津川絵理子句集「夜の水平線」

年頭にあたり今年の何か目標を!!ということで以前から考えていた散文置き場を作ることに。

特に読んだ句集で好きな句、感じたことを書き留めておく場所ということでブログ開設です。

その他、自分の活動なんかも書く予定。

 

年末年始の休みに読んだ句集から。

「夜の水平線」津川絵理子 2020.12.1刊行

受話器置く向かうもひとり鳥渡る

ひとり同士だとさびしくないかも。

 

暮れかかる空が蜻蛉の翅の中

蜻蛉の翅が透けて見える空は美しい。

 

鴉呼ぶ鴉のことばクリスマス

鴉は鴉の言葉でしゃべる。何を話しているのか知りたいが侵すことはできない。

 

雪原の足跡どれも逃げてゆく

何の足跡か分からない足跡をよく見る。姿はなかなか見られないんだけど。逃げられているからなのか。

 

玄関に犬の匂ひや夕立来る

犬を飼っているのでよくあること。雨の直前の匂いが濃くなる感じ。

 

春寒き死も新聞に畳まるる

死以外は何が畳まれているのだろう。死は畳まれてそっと仕舞われる。

 

ジェット機の音捨ててゆく冬青空

何気ない句だけど好き。気持ちが良い。

 

遠ざかる写真の日付枇杷の花

遠ざかるのは日付だけではないはず。自分とも遠ざかる感じ。

 

坂暑し一人ひとりの独り言

坂を昇るときってぶつぶつ文句を言いそう。笑ってしまった。「ひとり」のリフレイン。

 

水に浮く水鉄砲の日暮かな

遊び疲れた水鉄砲。明日までの休息。

 

古本に男のにほひ秋深し

どの男の人だろう。秋も深まるとちょっと寂しい。

 

ポケットの木の実の中の鍵探す 

どうして木の実をみると拾いたくなってしまうのか。団栗とか。団栗はポケットに入れると帽子が取れて後で悲しい思いをします。

 

さらりとした手触りのする句集でした。日常を掴み取りながらも句材が豊富。

今年最初に読んだ句集がこれで良かった~